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9月, 2018の投稿を表示しています

「花さく島の女王」CD制作プロジェクトについて(3)

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繊細そうなひとりの青年が、ハロウィンの準備で閉店時間を過ぎても、私ひとり作業をしていたPonoLipo Shopに突然現れて、「自分の作ったオーディオブック(CD付きの絵本)をお店に置いてもらえませんか。」と言うのですから、ちょっと驚きつつ、少しお話して、かなり切実な飛び込み具合が、私好みだったこともあって、とりあえずお預かりして、ひとり閉店後のお店で聴いてみたわけです。 クラシックギターの演奏は、ハッとして息をのむ素晴らしさでした。特に英語版のフラットなナレーションとの相性は悪くなく、今まで体験したことのない面白い物語体験となっていました。ただ物語の内容が、PonoLipoの趣味には合わず、商品は置けないが、チラシは置きましょうというお話をして、実際にチラシを置いて、それで彼のことは、ハロウィンからクリスマスにかけてと、怒涛のような忙しさの中で忘れかけていたのです。 ただ彼のクラシックギターの伴奏で、アンデルセンやグリムなどのヨーロッパの童話を静かな透き通った声のフラットなナレーションと合わせて聞いたら、さぞや美しい物語体験になるだろうなとか、夏目漱石の「夢十夜」とか、川端康成の短編あたりも、ゾクゾクするような耽美な物語体験になるに違いないとか、あれこれ思い浮かんで、彼にそうした感想をメールで書いて送りました。 その半年後、どうしたら「ラング世界童話全集」の面白さをインパクトのある新しい形で提案できるだろうか…と悩んでいた私は、そのクラシックギタリストの佐藤洋平さんのことを思い出したのです。「彼のギターの伴奏で透き通った友川さんのような美声のナレーションで…!あっ!これ2人にお声かけして、2人がやる気があればできるんじゃない!」うわー!うわー!と閉店後のお店の中を、ドキドキ大興奮してウロウロしてしまいました。小学生男子が「いいこと考えた!おれいいこと思いついちゃったよ!」と、ぴょんぴょん跳ねて興奮する、まさにあの状態です。 さっそくお2人にお声かけしたところ、速攻で「やります!」というお返事が返って来ました。これは、なかなか無いことですので、嬉しくて踊りだしそうになりました。たいていは、私の「いいこと思いついた!」の暴走には、周囲の人はついて来られず、ドン引きに引かれたりするのがオチですから、ほんとうに稀なことです。多分ほんとうにスゴイこと

理想のライブラリーを構築するプロジェクト

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After1 先日、9月8日土曜日に、英語の書籍120冊を含む500冊以上に上る書籍を新渡戸文化学園アフタースクールに新しく設けられた素敵なライブラリースペースに搬入し、セッティングしてきました。 廊下の脇のちょっとしたスペースが、子どものための読書スペースとなっていましたが、古い背の高い本棚ふたつと低い本棚ひとつに、古びた本が並んでいるだけで、生徒の数に比べて本の数も少なく、子どもの手が届かない背の高い本棚は使いづらそうに見えました。でも、ごろんと横になって本が読めるその一角は、子どもたちにとって居心地の良い人気の読書スペースでもあるようで、現場を下見した時にも、三々五々誰かしら、そこに来ては本を読んでいく様子でした。 Before1   Before2 この春、子ども園のライブラリー構築のお手伝いをしたのが、子どもたちにも先生にもご好評いただいたようで、小学校のアフタースクールの方の、この一角を素敵なライブラリースペースにする構想のお手伝いをすることになりました。 空間設計の方は、専門の設計・施工の会社が入り、私は上がってきた図面の本棚を埋める小学校低学年から高学年にかけての子どもたちのための本を英語・日本語取り混ぜて選書し取り寄せて、棚にセッティングするパートを受け持つことになりました。選書に関しては、全面的に任せていただけるということで、この2か月間真剣に取り組んできました。 理想のライブラリーを構築する、夢のようなプロジェクトですが、選書のプロセスは、ほんとうに大変でした。いろいろな嗜好の子どもがいますから、どの子も楽しく読める本が揃っていなければと思いますし、アフタースクールのライブラリーですから楽しいだけではダメで、その子の成長の糧になっていく本と出合える場でなければ意味がありません。 横並びで勉強をしていく学校とは異なり、自由にどんどん踏み込んで学んでいけるような深みも必要です。心の深いところに働きかける民話や昔話も大切ですが、読み継がれている名作童話も、薄い子ども用のダイジェスト版ではなく、きちんとした本で読んでほしいところです。図鑑や事典は、編集方針の異なる数社のものをズラリ揃えたいものです。 地図の本も、手を変え品を変え面白い形のものをいろいろと選びたいと思いま

「花さく島の女王」CD制作プロジェクトについて(2)

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9月25日「自由が丘Kids Fes」では、「ラング童話全集1 みどりいろの童話集」より「花さく島の女王」をプロのナレーターの友川まりさんが、透き通った美声で朗読するのに、クラシックギタリストの佐藤洋平さんが、この物語のために作曲した伴奏を演奏するライブイベントが開催されます。まだ午後4時からの2nd Stageには、余裕がございます。お子さま連れの親子1組500円、お子さまのいらっしゃらない大人の方も、ひとり500円にてご参加いただけます。 ご予約は、03-5726-9936 PonoLipo Shopまで、お早めにどうぞ。 ◆◆ 19世紀末、ロンドンに住む民族学者アンドリュー・ラングが、ヨーロッパ中、世界中の口頭伝承の物語を集めて出版した物語集のシリーズは、当時イギリスで大ヒットしたそうです。 イギリスは、世界中に植民地を広げ、19世紀後半のヴィクトリア朝時代には、大英帝国の絶頂期を迎えていました。世界中から珍しい物品が、ロンドンに集まって来ており、それと一緒に世界中の珍しい物語を記した書籍なども集まって来たのだと思います。 世界各地に散らばっていた、それまで個々の民族の中で口伝えで伝えられてきた民話や昔話、神話や伝説が、広く収集され、12冊の物語集としてまとめられて出版されたのです。ドイツの民話を集めたグリム童話や、アンデルセン自身の創作によるアンデルセン童話とは一線を画すグローバルな物語の収集と記録という、民俗学者らしい形の物語集です。 日本では、ノーベル文学賞を受賞した作家川端康成氏と、詩人で著述家の野上彰氏のふたりが、各巻にバランスよくいろいろな物語を散りばめて、日本の民話も織り込み構成し直して、編訳という形で12冊の物語集として出版されました。最初に出版された東京創元社のシリーズから、ポプラ社発刊のシリーズ、そして偕成社文庫より出版されているシリーズと、少しずつ手が加えられ、元のラング童話全集とは、内容の異なる日本独自の物語集となっています。 偕成社文庫の「ラング世界童話全集」には、突拍子のない場面転換や、つじつまの合わない不思議な展開の物語も多く含まれています。まるで不思議な面白い夢を見て目覚めた時のような、得も言われぬ読後感があります。大学で心理学を専攻し、ユング心理学に傾倒してきた私には、「ラング世界童話全集