「花さく島の女王」CD制作プロジェクトについて(3)

繊細そうなひとりの青年が、ハロウィンの準備で閉店時間を過ぎても、私ひとり作業をしていたPonoLipo Shopに突然現れて、「自分の作ったオーディオブック(CD付きの絵本)をお店に置いてもらえませんか。」と言うのですから、ちょっと驚きつつ、少しお話して、かなり切実な飛び込み具合が、私好みだったこともあって、とりあえずお預かりして、ひとり閉店後のお店で聴いてみたわけです。 クラシックギターの演奏は、ハッとして息をのむ素晴らしさでした。特に英語版のフラットなナレーションとの相性は悪くなく、今まで体験したことのない面白い物語体験となっていました。ただ物語の内容が、PonoLipoの趣味には合わず、商品は置けないが、チラシは置きましょうというお話をして、実際にチラシを置いて、それで彼のことは、ハロウィンからクリスマスにかけてと、怒涛のような忙しさの中で忘れかけていたのです。 ただ彼のクラシックギターの伴奏で、アンデルセンやグリムなどのヨーロッパの童話を静かな透き通った声のフラットなナレーションと合わせて聞いたら、さぞや美しい物語体験になるだろうなとか、夏目漱石の「夢十夜」とか、川端康成の短編あたりも、ゾクゾクするような耽美な物語体験になるに違いないとか、あれこれ思い浮かんで、彼にそうした感想をメールで書いて送りました。 その半年後、どうしたら「ラング世界童話全集」の面白さをインパクトのある新しい形で提案できるだろうか…と悩んでいた私は、そのクラシックギタリストの佐藤洋平さんのことを思い出したのです。「彼のギターの伴奏で透き通った友川さんのような美声のナレーションで…!あっ!これ2人にお声かけして、2人がやる気があればできるんじゃない!」うわー!うわー!と閉店後のお店の中を、ドキドキ大興奮してウロウロしてしまいました。小学生男子が「いいこと考えた!おれいいこと思いついちゃったよ!」と、ぴょんぴょん跳ねて興奮する、まさにあの状態です。 さっそくお2人にお声かけしたところ、速攻で「やります!」というお返事が返って来ました。これは、なかなか無いことですので、嬉しくて踊りだしそうになりました。たいていは、私の「いいこと思いついた!」の暴走には、周囲の人はついて来られず、ドン引きに引かれたりするのがオチですから、ほんとうに稀なことです。多分ほんとうにスゴイこと...