しつけ=社会化教育の要点について考える



急がば回れ、根気良く待つことが大切な幼児期のしつけ

 自分と親以外の存在が、全く眼中にない赤ちゃん期には、しつけは必要ありませんし、土台無理です。2歳くらいまでは、盲目的に赤ちゃんの欲求通りに、大人が動いて、その欲求を満たして上げることが大切です。全肯定で、抱っこして、あやして、できる限り安心で満足な状態を、周囲の大人が、一生懸命作っていくことが第一です。

 公園でお友達と一緒に遊んだりしだす2歳くらいから、「しつけ=社会化」が、だんだん必要になってきます。自分の欲求を抑えて、周囲の状況や、周りの人の気持ちを考えていくということを、5歳くらいまでの数年間かけて、少しずつゆっくり根気良く教えていくのです。「自分だけじゃないよ」「周りを見てごらん」「分かるよね」「頑張れるよね」という、静かな説諭と励ましで、ゆっくりその子のペースで理解させ、少しでも前進できたら「頑張れたね!」「すごいね!」「お兄ちゃんだね!(お姉ちゃんだね!)」「偉いね!」と褒めて励ましてという繰り返しで、三歩進んで二歩下がる感じでしょうか。とにかく大人の方の根気と忍耐が必要になります。子どもに、根気と忍耐について教えていくプロセスですから、教える大人の側にも、それが求められるのも仕方がないことと言えます。

  息子が、4歳から7歳までの4年間、ハワイで子育てを体験する中で、私自身の子供のしつけに対する考え方が大きく変わり、そのことで、子育てが、とても楽しく喜びの多いものに変化した「しつけの要点」というべきものがあります。

 ハワイで、私が素敵だなと思い、見習おうと思ったパパママ達は、子どもを叱りつけたり、ガミガミ言ったり、まして粗暴なあしらいや体罰など一切しませんでした。子ども達は、元気いっぱい物おじせずに言いたいことをはっきり言いますし、我が儘も言い、駄々も捏ねます。パパもママも、駄々を捏ねたり我儘を言ったりする子どもに対して動じることなく、静かに話を聞いて、周りの状況や、周囲の人たちの気持ちについて根気良く話して聞かせ、本人が納得して聞き分けるまで、忍耐強く付き合います。最初の頃は、すごいなぁ、根気がいいなぁと思って見ていましたが、子どもは一度納得すると、直ぐに機嫌を直しますし、そのように周囲の人達の気持ちについて丁寧に話してあげると、迷惑をかけて申し訳ないという気持ちも自然と湧いてくるようで、長い目で見ると急がば回れで、その場を早く収めようと無理に言うことを聞かせようとするよりも、親も子も消耗が少なく得るところが大きい解決策だということが、体験的に分かって来ました。

 根気良く繰り返し、いけない事悪い点について、静かに話して聞かせることと、その子の感情の昂りが治まって納得するまで、静かに待つこと。これが、幼児期の子どものしつけの要点です。親の方に気持ちの余裕がないと、これはなかなか出来ないので、子ども中心のゆったりしたスケジュールを組む、トラブルによる予定変更について対応可能な計画を立てる、大人中心になりそうな場合は、子どもを預けるなどの合理的な対応策を柔軟に取り込むといった事前の工夫が、大人の側に必要です。

 ただ、大人も人間ですから、体調がよくない時、気分が優れない時、不安や心配事で気もそぞろな時もままあります。ついつい声を荒げて叱ってしまったり、ガミガミ言ってしまったりという瞬間もあります。そこは「人間だから間違えたり、失敗したりすることもある」という格好のお手本として、子どもに対して、きちんと、自分の悪い態度を反省して「ごめんなさい」と謝ることが大切です。そうすれば、子どもも、謝れる人、許すことができる人になっていくと思います。自分が良い親かどうか、常に不安を抱えて、必死で子育てしている親にとって、自分の失敗を素直に認めて子どもに謝り、子供から許されるという経験から得られる安堵感は、驚くほど大きなものがあります。許し許されして、失敗しながら修復しながら、一生懸命日常を重ねてくことで、結果、お互いに尊重し合いながら、寄り添っていく関係性を築いていくことができるものと思います。

 一人で抱え込まずに、周囲の人に相談しながらということも、大変重要です。困った時に、どの大人に相談したら良いのか、幼い子どもは、パパママの日常から学んでいきます。上手に周囲と助け合って、失敗や困難を乗り越えていけるということを、子ども達は、家族の日常から学んでいくのですから、完璧を取り繕う必要など、どこにもないのです。肩の力を抜いて、深呼吸して、目の前のお子さんをハグして、元気出して頑張って下さいね。ものすごく大変な忍耐の時期も、たった数年間のことです。後から振り返って、一番懐かしく愛おしい子育ての日々が、実はこの数年間だったりしますから。


学童期の社会化教育は、自身の知的欲求を満たすために努力していくことにフォーカスする

 ハワイで見聞きしたアメリカ的な子育てと、日本での子育ての違いが、更に大きく感じられるのは、この学童期のしつけ(社会化教育)に対する大人の考え方です。日本では、家庭でも学校でも「静かに座って、黙って大人の話を聴く」「大人の言われた通りに行動したり、期待通りの言動をする」という受動的な態度が、非常に好ましいものとして、学童期も「自分の欲求を我慢し、抑制する」という幼児期のしつけが、そのまま踏襲されていきます。一方アメリカでは、子どもに高等教育を受けさせたいと考えるような家庭の親は、子ども達が学童期に達すれば、基本的な自分の欲求を状況によって抑制することができるようになっているという前提で、その子自身の知的好奇心や学業・運動・文化活動における高度な達成欲求というものを自覚させ、自分の目指す目標に向けて、挑戦し努力していくことを励まし、奨励していくというところに、明確にフォーカスがシフトしていきます。将来その子が、どのような事に取り組んで生きていくのかを探すことが、学童期の社会化教育の目的として、早くから意識されていくのです。つまり、その子の好きな事、興味関心がある事を、存分に夢中になってやらせるという、自身の知的欲求を開放しそれを達成するために頑張る力を育んでいくことが、非常に重要だと考えます。得意科目をどんどん先に進んでいける飛び級制や、さまざまな特色・形態の学校、家庭学習と教育機関の連携など、その子の個性に合わせた教育を選択し、組み合わせていくことができるようになっていますし、サマースクールなどで、自分の興味関心に特化した教育を、一定期間集中的に受講することも可能です。

 グローバル化した世界の中で、インターネットによる情報の渦の中を泳ぎ回って、目まぐるしく進化していくテクノロジーに対応して生き抜いていかなければならない現在の子ども達の状況を考えれば、こうしたアメリカ的な社会化教育(しつけ)観の方が、今の日本でも強く求められているのではないでしょうか。

 日本の教育現場の「静かに座って、黙って大人の話を聴く」「大人の言われた通りに行動したり、期待通りの言動をする」という受動的な態度を奨励する根底には「その方が、最小限のコストで楽にコントロールすることができる」という、大人の身勝手な論理が潜んでいるのではないでしょうか。未来を担う子ども達の「なんで?」「どうして?」「何が正しいの?」「どうすればいいの?」「どうして変わらないの?」という、世界や社会についての疑問や質問に対して、正面切って向き合っていくには、大人の側も、弛まぬ努力と学習が必要になります。それを面倒くさがって、コントロールしやすい状態を理想としているところがあるのではないでしょうか。集団学習という形態自体、これからの社会を生き抜く子どもにとって必要となる社会化教育のプロセスを補いきれなくなっているのではという疑問が、私の中で、今大きく膨らんできています。その子その子の個性を伸ばすのには、集団学習ではなく個別対応型のオプションが、日本の教育現場にも必要なのではないかと、強く感じています。

 学童期は、その子の個性と才能を伸ばす場を作ろうと、いろいろな習い事に通わせる時期でもありますが、通う先でも、集団学習中心で、その子自身から発想していく個別対応の指導を受けることが、なかなかできないのが現実です。ここ数年私立の小学校や外部の教育機関に出向いて、ワークショップを運営するようになり、そうした集団学習の限界について感じることが少なくありません。

 たまたま、この秋に、コロナの影響もあり参加者が少なく、小学校2年生のお子さんをマンツーマンで丁寧に教える機会を得ることができました。その子のペースに合わせて、その子の感性を大事に、一緒に1冊の絵本を作ることができました。パパとママに1冊、コロナで会えないおじいちゃんおばあちゃん達にも1冊ずつクリスマスプレゼントとして贈るということで、絵本に添えるカードも好きなものを吟味して選び、1枚ずつ心を込めてメッセージを添えて、最後の回には、お母さまも参加されて、印刷されて届いた絵本のお披露目会をしました。そのワークショップの3ヶ月の間、読んだ本の話をすることも多く、彼女の読書量が、どんどん増えていることも実感されました。最後に、お母さまから「将来は作家になる!」と、お家でお話していると伺いました。小学校2年生の時から作家になりたいと思って、その後ずっと一生懸命書き続けていけば、文章を書くという才能は、間違いなく開花し鍛錬されていくでしょう。将来、何らかの形で、文章を書くことを自分の仕事にしていくことができると思います。個別対応であれば、その子自身に寄り添って、その子の未来に繋がる大きな成果を得ることができるということが、強く実感された体験でした。

 各ご家庭で、そこまで手間暇かけた学びの場を設けることは難しいことです。けれど、忙しい日常のふとした時に、その子自身が熱心に取り組んでいることに、ちょっと目を留めて理解を示し、肯定的なお声掛けをして上げることは、少し心がければ、どなたでもできるのではないでしょうか。この後にご紹介する本に描かれているスティーブン・キングのママのように、それは、ほんとうに何気ないふと発した一言だったりするのですから。





ほんとうに役立つ育児書

 最近、私が読んだ書籍の中で、これは、日々子育てに悩んでいるパパママにとって、ほんとうに役に立つ最高の育児書なのではないだろうかと思った書籍を2冊ご紹介します。

 1冊目は、「It」「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」などを書いたベストセラー作家スティーブン・キングの「書くことについて」という書籍です。前半、スティーブン・キングが、自身の生い立ちの中で、書くことに目覚めていく過程を自伝的に書いています。親について、兄弟について、先生や周囲の大人について、非常に示唆に富んだ回想が綴られています。後半は、現実に小説家となるのに必要な「大量に読み、大量に書く」ということについて、いかに日常実践していくか具体的な経験や事例を交えて書かれています。パパママには、特に前半の部分を読むことをお勧めします。忙しい日常なかなか子どもに時間を割けない中で、親の子どもに対するふとした肯定的な一言が、どれだけ子どもの背中を後押しするか、子どもの好きなように自由に過ごさせることが、どれだけその子の自立心と主体性を育むか、改めて気づかされ、勇気が沸いていくる内容です。




 2冊目は、『ハーパーズ・マガジン』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』編集者・記者を経て、フリーのジャーナリストとなったポール・タフの著作「成功する子 失敗する子」という書籍です。これは、アメリカの子どもの貧困と教育政策について、研究者や教育機関、現場の教師や職員に、丁寧に取材して書かれた教育の最前線レポートです。乳児期から大人になるまでを俯瞰した、家庭と教育機関における教育の果たす役割と可能性について、最前線の状況を詳しく丁寧にレポートしていて、大変読み応えのある一冊です。未来が見通せない不安の大きい中で子育てするパパママにとって、乳幼児期の愛着行動(抱っこしたりあやしたり、ヨシヨシしたりという何気ない行動)が将来にわたって子どもの糧になることや、不安を煽る受験産業に惑わされずに、遠い将来まで見越した根気とポジティブな未来志向で子どもを見守り続けていくことの大切さを改めて教えてくれる良書です。



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