「花さく島の女王」CD制作プロジェクトについて(1)
こちらのブログで、少し経過ご報告いたしました「花さく島の女王」CD制作プロジェクトも、いよいよ大詰め。マスター音源・ブックレットのデザイン原稿なども無事入稿し、現在予定通り初版500枚の本制作に入りました。9月25日「第2回 自由が丘Kids Fes」にて、お披露目のライブイベントを開催し、PonoLipo Shopでいよいよ発売開始となります。
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このプロジェクトの発端は、私自身の素朴な疑問にありました。私をよく知る人は、そのマイペース加減、空気を読まないにもほどがある言動、あくなき好奇心と実験精神、よく常軌を逸した域に達する思考回路、つまり奇人変人であることを知っています。いつでもどこでも立派な出る杭になって、これまでの人生でもボッコボコにいじめられたり、パワハラされたり日常茶飯事だったわけですが、そのどの場面を切り取っても、一度も死のうと考えたことが無いのです。変だから考えなかったのでは?というご意見もありましょうが、辛く苦しく逃げてしまいたいと思うことは、もちろん何度もありました。そうした時に、私が夢想したのは、「家出」であり、「旅に出る」であり、「冒険する」でした。
「死ぬ」ではなく「冒険の旅に出る」を夢想するためには、何が必要なんでしょうか。
私の母は、赤ん坊の私に期待と夢を抱いたのか、当時の我が家の経済的な状況からするとあり得ない出費をして、私が生まれた頃に講談社から発刊された「世界童話文学全集」全18巻を買いそろえました。物心ついた時には、その全集は私の傍にあり、私の一番古い記憶は、3才の頃、病院の待合室で母が、買い物かごに入れて持ってきたその分厚い一冊を、順番を待つ間弟と私に読み聞かせてくれたことです。確か「マッチ売りの少女」だったと思います。紙の色・手触り、挿絵の絵柄まで鮮明に記憶しています。風邪で寝込んだ時に、傍らで母が、その童話集を読み聞かせてくれるのを、りんごを食べながら聞いた記憶も残っています。やはり3才か4才頃のことだったと思います。小学校低学年までの間に、何度もその全集を読んだ記憶もあります。小学生時代は、それ以外の童話や民話も大好きで、本の虫でした。
私の母は、赤ん坊の私に期待と夢を抱いたのか、当時の我が家の経済的な状況からするとあり得ない出費をして、私が生まれた頃に講談社から発刊された「世界童話文学全集」全18巻を買いそろえました。物心ついた時には、その全集は私の傍にあり、私の一番古い記憶は、3才の頃、病院の待合室で母が、買い物かごに入れて持ってきたその分厚い一冊を、順番を待つ間弟と私に読み聞かせてくれたことです。確か「マッチ売りの少女」だったと思います。紙の色・手触り、挿絵の絵柄まで鮮明に記憶しています。風邪で寝込んだ時に、傍らで母が、その童話集を読み聞かせてくれるのを、りんごを食べながら聞いた記憶も残っています。やはり3才か4才頃のことだったと思います。小学校低学年までの間に、何度もその全集を読んだ記憶もあります。小学生時代は、それ以外の童話や民話も大好きで、本の虫でした。
母の田舎へ行くと、おじさんやおばさんたちが、「○○の□□さんとこの奥さんが、2週間くらい前に山に入って作業してから、様子がおかしいらしい。どうも狐が憑いたらしいって噂になってる。」などと、普通に真顔で会話していたことも憶えています。「狐が憑くって、どうなるの?」と訊くと、おじさんは「四つ足で部屋の中走ったり、コンと鳴いて油揚げを食べたがるようになるらしい。」と教えてくれて、私は衝撃で目が皿のようになって固まったのを憶えています。
水木しげるさんが漫画を描いていた頃私の子ども時代は、日本の田舎には、そうした口頭伝承の民話や昔話が溢れていました。漫画や児童書も充実していました。子どもの数が多かったせいか、世界の童話の全集などの良書が次々出版されて、ベッドタウンの団地でも、図書館や児童館にずらっと良い本が並んでいて、活気に溢れていました。
商店街のおじさんやおばさん、リヤカーや屋台でモノを売りに来る人、駅で切符を切る人、バスの車掌さん…子どもが日常接する大人も、いろいろな人がいて、あれこれ声を掛けてくれて、顔見知りになる機会も多かったのです。
街の本屋さんにも絵本や童話、児童書、漫画、学年誌がたくさん揃っていて、物語は、子どもの生活のそこここに当たり前のように溢れていました。
今PonoLipo Shopで、小さな子供たちと子育てしているママたちと接して、いろいろお話を聞いていて思うのは、「先生」と「○○ちゃんのママ」「□□ちゃんのパパ」という大人以外のいろいろな大人と、子どもが接して会話する機会が非常に乏しいということと、親子で多様な物語に出会う機会が、著しく減っているということです。これは、若いパパやママのせいではなく、社会の中に子どものためのインフラがどんどん無くなってきていることが大きいと思います。
「多様な人の在り様に接すること」「口頭伝承により語り継がれてきた物語や代々読み継がれてきた物語に接すること」、このふたつは、その子の想像する力を育むのにとても重要なことです。まだ行ったことのない不思議な国、もう今はない昔の暮らし、妖怪や妖精、謎の生き物…その子の想像の世界を無限に広げていく力をつけていくためにも、多様な人と物語に接していくことは大切です。
何十年、何百年という年月無数の人々により語り継がれ読み継がれて現代に生き残った物語は、心の深いところ、ユングの言うところの集合無意識に働きかける力を持った物語だと私は信じています。子供たちの健全な心を育むのには、そうした物語に接する機会が必要なのではないでしょうか。自分の人生が、誰かにコントロールされていて、狭い世界で期待通りに振る舞うしかないこととイメージされるか、それとも自分で自由に冒険の旅をすることとイメージできるかで、その子自身の前を向いて生きていく力が決定づけられるのではないでしょうか。
PonoLipoの子どもたちに、そうした物語体験をするのに良い、小さなお店でも置ける良い本はないものだろうか…一生懸命ネット上で探し回っていたところ、「ラング世界童話全集 全12巻」(偕成社文庫)に巡り合ったのです。これだ!と、巡り合った一瞬息が止まりそうになりました。
(つづく)
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